一般公開2019にて、共生の未来について考えてみた

共生【きょうせい】の未来について考えてみた

未来の環境や食について今、様々な研究や予測がされているけど、実際は未来になってみないとわからない。でもわからないからこそ「未来が、こうなったらいいんじゃないだろうか?」って言うような希望を考えておく必要があるんじゃないかと思う。

人間が考え得る事は全て実現可能と言われているから。

僕らは毎日毎日、様々な知識を蓄え、植物の共生という分野について考え、「研究」しているけれど、今回だけは頭の中を真っさらなキャンパスにして自由に未来の植物や食料についてのアイデアを思い描いてみました。

今回の取り組みは今から少し未来の2300年の世界植物、食料分野で活躍している架空設定の団体(企業)が一体どんな取り組みをしているかを考えてみました。

パートナーには美術作家の小島和人ハモニズムとアドバイザーとして前川総研の篠崎聡氏を加え、様々な知見を加えてアイデアを考えました。

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

アーバスキュラー菌根菌とは?

Print菌根菌は大きく分けて7種類(人によっては8種類)います。それで私たちが扱うのはその中で最もメジャーなアーバスキュラー菌根菌(以下、AM菌)というタイプの菌根菌です。現在、AM菌は316種類ほどいると見積もられていていますが、後述する理由で培養が難しく、そのほとんどがバイオリソース化されていません。

このAM菌は地球上で植物が生えている場所のほぼどこにでもいます(ただし、樹木にはあまり感染せず、別なタイプの菌根菌が感染します)。実際、陸地にいる全植物の8割はこの菌が感染していると言われています。つまり、感染していない植物の方が少ないのです。このAM菌がいなくなると植物の生育が相当貧弱になります。AM菌を完全に殺した土に肥料を与えて、ネギの種を播いて約2ヶ月間育てた時の写真が、左側のポットです。そこに、他の条件は全く一緒で種を蒔くときにAM菌を入れて育成したのが右側のポットです。ご覧の通り、AM菌がいないと貧弱な生育を示しますが、AM菌を入れると大きく改善します。

 この理由は、この菌が植物に感染・共生すると、養分(特にリン酸)と水分吸収の促進、塩・乾燥ストレス耐性の向上、植物病原菌への耐性の向上などの効果を与えて、植物の生育を大きく改善するためです。その代わりに植物は光合成で得た炭素源をAM菌に与えています。ここでは、このようなAM菌による何らかの有益な効果をまとめて「接種効果」といいます。

このようにAM菌は植物の生育を大きく改善することから、農業への利用が期待されています。実際に、AM菌は日本の地力増進法で認められている土壌改良資材の1つに挙げられています(VA菌根菌資材として規定されています)。しかし、同時に農地ではAM菌の上手な利用の仕方がわかっていません。

この理由は、多くの要因(農地のAM菌の数、圃場の環境条件、植物との相性、農地への過剰な施肥や農薬散布、農作物の品種改良など)がAM菌の接種効果に正負の影響を与えるため、AM菌を使うべき場面を正確に理解出来ていないためです。

また、AM菌自体の理解もまだまだ不十分です。これは、AM菌がいくつかの(研究を面白くも、難しくもさせる)特徴を持っているためです。

1つは単独で培養出来ないということです。AM菌は植物から与えられる炭素源に完全に依存しているため、皆さんがよく知るアオカビや酵母のように、適切な培地を使って無菌的に単独で培養することが出来ません。その増殖には植物との共生が必須です(絶対共生と言います)。

特別研究員
佐藤 匠
Sato Takumi