アーバスキュラー菌根菌とは?

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Print菌根菌は大きく分けて7種類(人によっては8種類)います。それで私たちが扱うのはその中で最もメジャーなアーバスキュラー菌根菌(以下、AM菌)というタイプの菌根菌です。現在、AM菌は316種類ほどいると見積もられていていますが、後述する理由で培養が難しく、そのほとんどがバイオリソース化されていません。

このAM菌は地球上で植物が生えている場所のほぼどこにでもいます(ただし、樹木にはあまり感染せず、別なタイプの菌根菌が感染します)。実際、陸地にいる全植物の8割はこの菌が感染していると言われています。つまり、感染していない植物の方が少ないのです。このAM菌がいなくなると植物の生育が相当貧弱になります。AM菌を完全に殺した土に肥料を与えて、ネギの種を播いて約2ヶ月間育てた時の写真が、右側のポットです。そこに、他の条件は全く一緒で種を蒔くときにAM菌を入れて育成したのが左側のポットです。ご覧の通り、AM菌がいないと貧弱な生育を示しますが、AM菌を入れると大きく改善します。

 この理由は、この菌が植物に感染・共生すると、養分(特にリン酸)と水分吸収の促進、塩・乾燥ストレス耐性の向上、植物病原菌への耐性の向上などの効果を与えて、植物の生育を大きく改善するためです。その代わりに植物は光合成で得た炭素源をAM菌に与えています。ここでは、このようなAM菌による何らかの有益な効果をまとめて「接種効果」といいます。

このようにAM菌は植物の生育を大きく改善することから、農業への利用が期待されています。実際に、AM菌は日本の地力増進法で認められている土壌改良資材の1つに挙げられています(VA菌根菌資材として規定されています)。しかし、同時に農地ではAM菌の上手な利用の仕方がわかっていません。

この理由は、多くの要因(農地のAM菌の数、圃場の環境条件、植物との相性、農地への過剰な施肥や農薬散布、農作物の品種改良など)がAM菌の接種効果に正負の影響を与えるため、AM菌を使うべき場面を正確に理解出来ていないためです。

また、AM菌自体の理解もまだまだ不十分です。これは、AM菌がいくつかの(研究を面白くも、難しくもさせる)特徴を持っているためです。

1つは単独で培養出来ないということです。AM菌は植物から与えられる炭素源に完全に依存しているため、皆さんがよく知るアオカビや酵母のように、適切な培地を使って無菌的に単独で培養することが出来ません。その増殖には植物との共生が必須です(絶対共生と言います)。

本チームではAM菌を植物の根とともにin vitro(試験管内)で培養できる技術開発をしており、その技術を使って国内からAM菌を収集し、バイオリソース化する研究をしております。またAM菌を農業に応用する研究も行っております。

特別研究員
佐藤 匠
Sato Takumi