理研オープンライフサイエンスプラットフォームにメンバーとして参画することになりました

理化学研究所には多くの研究分野の研究者が集まっております。
これらの多様性の力を最大化させる取り組みの一つとして、理研オープンライフサイエンスプラットフォーム(OLSP)というプロジェクトが2019年度より開始しました。

OLSPは、オープンサイエンスの推進のため、データ蓄積のための基盤技術の開発、理研内外のオープンデータの集積、オープンデータ活用・解析のための研究開発を目的としたプロジェクトになります。

本チームは2023年度からOLSPの主要メンバーとして参画させていただき、2023年6月15-16日に開催されたOLSP Workshop 2023に市橋チームリーダーが参加しました。本ワークショップでは、理研が進めるTRIP(Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platforms)構想におけるオープンサイエンス、オントロジー作業部会、オープンサイエンス活動評価基準など今後の展望などについて議論しました。

特にDSI(Digital sequence information)問題として2022年12月に決定された昆明宣言にて遺伝資源情報からの利益配分が約束されたことについて話題提供されました。このDSI問題は私たち研究者にとっても決して無視できない流れになっていることを知りました。オープンサイエンスと一言でいっても、データをオープンにすることには様々な視点からの制約を考慮する必要があり、またこのような世の中の流れを鑑みながら研究を進めることの重要性を改めて認識することになりました。

またDSI問題を含め今回のワークショップでの議論から、日増しにデータが多くなってきている現状に対して、研究者としての自身の行動変容についても考えさせられました。有限な環境資源と同様に、無限の資源だと考えられるデータについても大量生産・大量消費・大量廃棄から持続可能な活用方法があるのだろうか。その解答の一つにオープンサイエンスによるデータの有効利用が考えられるが、データを公開する上でデータ生成から解析に関わるすべての関係者にメリットがあるような仕組みがないだろうか。そのような考えを巡らせながら、ここ数年で注目されているDeSci(Decentralized Scinece)にヒントがあるように感じております。今後のOLSPの活動を通して、考えていきたいと思います。

OLSPのwebsiteはこちら:
https://olsp.riken.jp

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

大学院生リサーチ・アソシエイトの藤原さんがつくばちびっ子博士オンライン講演をします

大学院リサーチ・アソシエイト(JRA)の藤原さんが土壌微生物について小中学生に向けた講演をします。
オンラインでライブ講演とともに期間限定のアーカイブ配信も予定しております。
今、土壌の微生物がとても熱いです!
例えば、以下のような一般向けの本でも注目されております。

ぜひお近くのお子さんにオススメください。

詳細はこちらになります:
https://tsukuba.riken.jp/topics/20230620/

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

植物の根の周りにある「声」について考えてみた。Plant & Cell Physiology雑誌に総説論文が掲載されました

ストリゴラクトンは、植物ホルモンの中で最も新しく発見された物質です。ストリゴラクトンは、30種類以上の異なる分子に総称で、それぞれの分子がピコ〜ナノモル濃度といった極低濃度で異なる機能を示していることがわかってきました。特に私たちが興味を持っている植物と微生物の共生関係においても、ストリゴラクトンが重要な働きをしていることが明らかにされています。
今回、7年ほど前に寄生植物の研究を一緒にしていた研究者とともに、ストリゴラクトンの根圏シグナル分子としての役割について最近の研究をまとめる機会を頂きました。私は、ストリゴラクトンが根圏微生物叢に与える影響について最近の知見をまとめました。
私たち人類が複数の異なる言語を使いながら他者とコミュニケーションしているのと同様に、植物の根の周りでも異なる生物(細胞)同士が少しずつ異なるストリゴラクトンという分子を介してコミュニケーションをとり、それぞれの生存戦略を図っている様子を窺い知ることができます。今回の論文執筆を通して、植物と微生物で構成された一見雑多な集団にみられるファジーな秩序について色々と考えさせられました。
ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

総説論文はこちら:
https://academic.oup.com/pcp/advance-article/doi/10.1093/pcp/pcad055/7190141?login=false

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

熊石テクニカルスタッフの取材記事が公開されました

理研のクローズアップ科学道で熊石テクニカルスタッフが取材を受け、日々の研究活動について話しました。熊石さんの仕事に対するプロフェッショナルな姿勢を改めて知ることができ、感謝感激しております。

記事はこちら:
https://www.riken.jp/pr/closeup/2023/20230602_1/index.html
新たな挑戦に向けて、頑張ってください!妃恵、飛べ!

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

共同研究成果がプレスリリースされました

持続可能な農業のための堆肥-土壌-植物相互作用モデルについての共同研究がプレスリリースされました。
これまで複雑な農業生態系の背後にあるメカニズムについて科学的に理解することが難しかったのですが、本研究や本チームの研究で取り組む「農業生態系をデジタル化して、データドリブンで仮説を立て、実験による検証する」という研究アプローチが有効であることが分かってきました。
今後もこのような研究アプローチから多くの研究成果がもたらされると期待できます。

プレスリリースはこちら:
https://www.riken.jp/press/2023/20230412_1/index.html

原著論文はこちら:
https://www.nature.com/articles/s43705-023-00233-9

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

熊石テクニカルスタッフが理研技術奨励賞(桜舞賞)を受賞しました!

熊石妃恵さんは、植物−微生物共生研究開発チームの立ち上げから参加しているテクニカルスタッフです。
熊石さんは、本チームの主要なオミクス技術であるトランスクリプトーム解析およびマイクロバイオーム解析を習得して、2018年4月から2022年12月現在までで47プロジェクト(2,841サンプル)におけるオミクス解析に従事し、非常に大きな貢献をしています。
これらの研究の一部が現在までに10報の論文成果につながっております。その中でも、2022年にはマイクロバイオーム解析のライブラリー作成をハイスループット化することに成功し、その技術開発の結果を筆頭著者として原著論文で発表しました。
これらの業績が高く評価され、今回、名誉ある桜舞賞に受賞していただきました。
熊石さん、よく頑張りました!おめでとうございます!

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

研究のアウトリーチ活動について考えてみた

近年、研究機関が自らの研究の価値や成果について、地域住民や一般の方々への情報共有を行う「アウトリーチ活動」が重要視されています。
今回、理研BRCの一般公開で使用した映像の企画・制作を担当したロフトワークの黒沼雄太さんと、プロジェクトの振り返りやアウトリーチのこれからについて議論しました。
今回の意見交換を通して、日々私たちが取り組んでいる「研究」という活動について俯瞰的に考えることにつながり、個人的に非常に有意義な時間を過ごすことができました。改めて、関係者の方に感謝申し上げます。
研究者の方も普段あまり考えていない気づきがあると思いますので、ぜひ今回の議論をご確認ください:
https://loftwork.com/jp/project/rikenbrc_movie

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

葉の多様性から育種について考えてみた。Breeding Science誌に総説論文が掲載されました

トマトと言えば、赤くて丸い果実を思い描く人が大半だと思います。そんなトマトの育種について、葉の発生の研究をしてきた3人の研究者でまとめた総説が発表されました。私たち3人ともアメリカのカリフォルニア大学デービス校のProf. Neelima Sinha研究室で留学の経験があります。時期は異なるので、一緒にアメリカで過ごしてきたわけではありませんが、3人ともトマトの葉の多様性について研究をしてことがあり、一見つながりが見出しづらいトマトの果実と葉について分子レベルで考察をしてみました。トマトの育種について新しい視点を提供できたと自負しておりますので、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

総説論文はこちら:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs/advpub/0/advpub_22061/_article/-char/en

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

農業デジタルツインの開発について総説論文がBBB誌に掲載されました

農業を取り巻く環境は、作物、微生物、土壌の複雑な関係によって成り立つ生態系です。現在、世界の多くで実施されている農業では、化学肥料や化学農薬を多用し、頻繁な耕起により、農業生態系における有益な相互作用が破壊され、様々な環境問題を引き起こしております。環境に調和する形で持続可能な農業を実現するために、農業生態系の複雑な相互作用の機能的な側面を理解した上で、農業生態系からの利益を最大化する必要があります。そこで私たちは、マルチオミクス解析からのデータを利用した農業デジタルツインの開発に取り組んでおります。本総説では、農業生態系におけるオミクス解析について最近の研究をレビューし、因果探索・モデリング・データ同化を利用した農業デジタルツインの開発について論じております。
また本総説論文は、BBB誌の2023年1月号の表紙に選定されました!

総説論文はこちら:
https://academic.oup.com/bbb/article/87/1/21/6843571?login=false#389051532

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi