研究のアウトリーチ活動について考えてみた

近年、研究機関が自らの研究の価値や成果について、地域住民や一般の方々への情報共有を行う「アウトリーチ活動」が重要視されています。
今回、理研BRCの一般公開で使用した映像の企画・制作を担当したロフトワークの黒沼雄太さんと、プロジェクトの振り返りやアウトリーチのこれからについて議論しました。
今回の意見交換を通して、日々私たちが取り組んでいる「研究」という活動について俯瞰的に考えることにつながり、個人的に非常に有意義な時間を過ごすことができました。改めて、関係者の方に感謝申し上げます。
研究者の方も普段あまり考えていない気づきがあると思いますので、ぜひ今回の議論をご確認ください:
https://loftwork.com/jp/project/rikenbrc_movie

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

葉の多様性から育種について考えてみた。Breeding Science誌に総説論文が掲載されました

トマトと言えば、赤くて丸い果実を思い描く人が大半だと思います。そんなトマトの育種について、葉の発生の研究をしてきた3人の研究者でまとめた総説が発表されました。私たち3人ともアメリカのカリフォルニア大学デービス校のProf. Neelima Sinha研究室で留学の経験があります。時期は異なるので、一緒にアメリカで過ごしてきたわけではありませんが、3人ともトマトの葉の多様性について研究をしてことがあり、一見つながりが見出しづらいトマトの果実と葉について分子レベルで考察をしてみました。トマトの育種について新しい視点を提供できたと自負しておりますので、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

総説論文はこちら:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs/advpub/0/advpub_22061/_article/-char/en

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

農業デジタルツインの開発について総説論文がBBB誌に掲載されました

農業を取り巻く環境は、作物、微生物、土壌の複雑な関係によって成り立つ生態系です。現在、世界の多くで実施されている農業では、化学肥料や化学農薬を多用し、頻繁な耕起により、農業生態系における有益な相互作用が破壊され、様々な環境問題を引き起こしております。環境に調和する形で持続可能な農業を実現するために、農業生態系の複雑な相互作用の機能的な側面を理解した上で、農業生態系からの利益を最大化する必要があります。そこで私たちは、マルチオミクス解析からのデータを利用した農業デジタルツインの開発に取り組んでおります。本総説では、農業生態系におけるオミクス解析について最近の研究をレビューし、因果探索・モデリング・データ同化を利用した農業デジタルツインの開発について論じております。
また本総説論文は、BBB誌の2023年1月号の表紙に選定されました!

総説論文はこちら:
https://academic.oup.com/bbb/article/87/1/21/6843571?login=false#389051532

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

稲作の農業生態系のデジタル化プロジェクトが開始します

長岡技術科学大学を中心とした産学官コンソーシアム(研究代表・小笠原渉教授)が、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)の地域共創分野・本格型に採択されました。本プログラムでは、“コメどころ“新潟を次世代に引き継いでいくために、新潟県内の豊富な資源やバイオ技術を活用することで、新潟の地に資源完全循環型バイオコミュニティを実現することを目指し、農家や製造業、自治体、金融機関を含む地域のステークホルダーと対話を重ねながら事業を進めてまいります。
本チームでは、稲作の農業生態系のデジタル化を担当します。地域の農家や研究所の協力を得て、圃場の土壌成分や土壌に含まれる微生物などの水稲栽培ビッグデータを収集・解析し、美味しいコメを作るために必要な水稲‐土壌微生物‐土壌の状態を学術的に明らかにします。学術的エビデンスに基づき、おいしい米・持続的な農業に取り組んでいる水田を可視化することで、生産された米のブランディング・マーケティングにつながればと考えております。

プロジェクトのwebsiteはこちら:
http://coi-next.nagaokaut.ac.jp
websiteのhome一番下にある動画をぜひご覧ください!

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

マイクロバイオーム解析をハイスループット化!Scientific Reports誌に論文が掲載されました

今回私たちは磁性ビーズを使ったDNA抽出法とエキソヌクレアーゼによるPCR精製を組み合わせることで、従来のマイクロバイオーム解析のライブラリー作成をハイスループット化することに成功しました。
私たちの方法は従来の方法と同等なデータの質を維持しながら、労力とコストを大幅に削減することができ、自動化にも相性が良い手法です。植物マイクロバイオームとして、シロイヌナズナ、ダイズ、イネ、ミナトカモジグサ、アブラナ科植物の根サンプルでの実績があり、土壌マイクロバイオームとして、灰色低地土、黒ぼく土、泥炭、褐色森林土での実績があります。
また民間企業様との共同研究により、今回の論文で発表した方法よりもさらに幅広い土壌サンプルから高精度でDNAを抽出できる技術も開発できております。
シーケンス技術やデータサイエンスの進展に比べて、DNA抽出〜ライブラリー作成といったサンプル前処理は泥臭いマニュアルな工程であり、マイクロバイオーム解析のスケールにおいてボトルネックとなっています。本研究開発は、そのボトルネックを解消してハイスループット化に資するものであり、今後の学術研究ひいては社会貢献に貢献できると期待しております。

原著論文はこちら:
https://www.nature.com/articles/s41598-022-23943-x

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

チームリーダーがプラネタリーヘルスケア・フォーラムで講演します

本フォーラムは、「健康寿命の延伸」を唱える日本ヘルスケア協会が主催です。医学系の団体が主催するフォーラムで農業関連の話をしてくださいと打診を受けたときは正直驚きました。しかしよくよく話を聞いてみると納得でした。
日本ヘルスケア協会では「野菜で健康推進」「お米で健康推進」「土壌で健康推進」の3部会を持っております。また昨今の地球規模での土壌劣化や温暖化により人類の食や健康が脅かされていることから、人々と地球の健康(プラネタリーヘルス)について学び議論する機会を作りたいという想いから本フォーラムが企画されたとのことです。
招待されている方は、森林総研の藤井先生と産総研の菅野先生です。パネルディスカッションにて先生方と土壌とヘルスケアについて議論します。
医療と農学の融合。いつか着手できたらと思っていたトピックスですが、こんなにも早く考える機会をいただけるとは思っておりませんでした。関係者には感謝の気持ちでいっぱいです。この分野融合は必ず次の潮流になると確信しておりますので、本フォーラムでしっかり学んで、意見交換をしていきたいと思います。

参加登録等の詳細はこちら:
https://planetary-healthcareforum.peatix.com

当日の様子:
https://jahi.jp/未分類/3661/

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

Frontiers in Plant Science誌で農業生態系のリサーチトピックが始まります

Frontiers in Plant Science誌にて「Unlocking the Diversity and Potential of Plant Microbiomes in Agroecosystems」という農業生態系に関するリサーチトピックが始まります。エディターの一人として市橋チームリーダーも参加しております。
関連する研究をされている方はぜひ投稿をご検討ください。原著論文でも総説論文でも受け付けております。

詳しくはこちら:
https://www.frontiersin.org/research-topics/46651/unlocking-the-diversity-and-potential-of-plant-microbiomes-in-agroecosystems?utm_source=F-RTM&utm_medium=TED1&utm_campaign=PRD_TED1_T1_RT-TITLE

アシスタント
南部 真夕
Mayu Nanbu

理研筑波地区の一般公開が10月15日(土)に開催されます

今年の一般公開は現地参加とオンライン参加のハイブリッド開催となります。
どちらもお子様から大人の方まで楽しめる内容となっていますので、是非ご参加ください!

なお、現地参加は申込みが必要となります。
事前申込受付期間:2022年9月18日まで

理研筑波地区一般公開特設ウェブサイトはこちら:
https://openday-tsukuba.riken.jp/

アシスタント
南部 真夕
Mayu Nanbu

植物の形質転換効率を上げる化学物質を発見!Plant Biotechnology誌に論文が掲載されました

アグロバクテリウムを使った植物形質転換技術は、学術研究から応用研究までよく利用されています。本研究ではヒトの非ステロイド性抗炎症薬であるテノキシカムが植物の免疫システムを阻害することで、植物の形質転換効率を向上する作用を示すことを発見しました。モデル植物シロイヌナズナ及びバイオ燃料の原料であるジャトロファにおいて、テノキシカムにより一過的形質転換効率の向上が確認できました。テノキシカム処理は簡易で安価な方法であり、本研究で試験した以外の植物種への利用も期待されます。
本研究成果は、10研究室の共同研究の賜物です。私が関わった研究の中で最も長期間費やした研究であり、着想から6年以上経って、ようやく世に出すことができました。研究内容は非常にシンプルなものの、この背景で生じた様々な経験により研究者として大きく成長させていただきました。共同研究者の皆様にはこの場を借りて深く感謝申し上げます。

原著論文はこちら
https://www.jstage.jst.go.jp/article/plantbiotechnology/advpub/0/advpub_22.0312a/_article/-char/ja

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

チームリーダーが理研イノベーションセミナーで発表します

理化学研究所の研究成果を新たな事業の創出につなげ社会へ還元することを目指した共創活動の一環として、理研イノベーションセミナーが開催されます。
最近の研究動向として、研究成果からの社会還元が強く求められております。また多くの研究者は任期制という社会的な背景もあり、研究者を取り巻く状況は日々速度感が増しております。
一方で、学術研究や基礎研究には多くの時間を要するため、短期的な研究成果に惑わされてしまうことにより、根幹にある研究力の低下が危惧されております。
このような時代の研究者として、どんな行動をすべきか?模索する日々を過ごしておりますが、その解の一つとして、「学術研究段階の研究においても想像力を逞しくて未来ビジョンを描くこと」が大切だという考えに至りました。
本セミナーでの講演では、私が想像する未来について、企業の方と議論してみたいと思います。

理研サイトでの案内
https://www.riken.jp/pr/events/seminars/20220922_1/index.html

理研鼎業サイトでの案内
https://www.innovation-riken.jp/events/seminar14/

アシスタント
南部 真夕
Mayu Nanbu