2023年度理研ハッカソンが開催されます

10月24-27日に理化学研究所神戸キャンパスにて、念願のオンサイトで、2023年度理研ハッカソンが開催されます。
本チームが進めるMSプロジェクトメンバーとともに理研ハッカソンの農学セッションを開催する予定です。事前公開シンポジウムではデータ利活用・応用事例紹介として市橋チームリーダーが講演をします。ハッカソンではこれまで取得した土壌生物性データを使って論文化を目指したデータ解析を進めたいと思います。もしハッカソンに参加したい方は下記のサイトからの事前登録に加えて、私までご一報ください。

理研ハッカソンについて:https://www.riken.jp/pr/events/symposia/20231024_1/index.html

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

理研オープンライフサイエンスプラットフォームにメンバーとして参画することになりました

理化学研究所には多くの研究分野の研究者が集まっております。
これらの多様性の力を最大化させる取り組みの一つとして、理研オープンライフサイエンスプラットフォーム(OLSP)というプロジェクトが2019年度より開始しました。

OLSPは、オープンサイエンスの推進のため、データ蓄積のための基盤技術の開発、理研内外のオープンデータの集積、オープンデータ活用・解析のための研究開発を目的としたプロジェクトになります。

本チームは2023年度からOLSPの主要メンバーとして参画させていただき、2023年6月15-16日に開催されたOLSP Workshop 2023に市橋チームリーダーが参加しました。本ワークショップでは、理研が進めるTRIP(Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platforms)構想におけるオープンサイエンス、オントロジー作業部会、オープンサイエンス活動評価基準など今後の展望などについて議論しました。

特にDSI(Digital sequence information)問題として2022年12月に決定された昆明宣言にて遺伝資源情報からの利益配分が約束されたことについて話題提供されました。このDSI問題は私たち研究者にとっても決して無視できない流れになっていることを知りました。オープンサイエンスと一言でいっても、データをオープンにすることには様々な視点からの制約を考慮する必要があり、またこのような世の中の流れを鑑みながら研究を進めることの重要性を改めて認識することになりました。

またDSI問題を含め今回のワークショップでの議論から、日増しにデータが多くなってきている現状に対して、研究者としての自身の行動変容についても考えさせられました。有限な環境資源と同様に、無限の資源だと考えられるデータについても大量生産・大量消費・大量廃棄から持続可能な活用方法があるのだろうか。その解答の一つにオープンサイエンスによるデータの有効利用が考えられるが、データを公開する上でデータ生成から解析に関わるすべての関係者にメリットがあるような仕組みがないだろうか。そのような考えを巡らせながら、ここ数年で注目されているDeSci(Decentralized Scinece)にヒントがあるように感じております。今後のOLSPの活動を通して、考えていきたいと思います。

OLSPのwebsiteはこちら:
https://olsp.riken.jp

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

共同研究成果がプレスリリースされました

持続可能な農業のための堆肥-土壌-植物相互作用モデルについての共同研究がプレスリリースされました。
これまで複雑な農業生態系の背後にあるメカニズムについて科学的に理解することが難しかったのですが、本研究や本チームの研究で取り組む「農業生態系をデジタル化して、データドリブンで仮説を立て、実験による検証する」という研究アプローチが有効であることが分かってきました。
今後もこのような研究アプローチから多くの研究成果がもたらされると期待できます。

プレスリリースはこちら:
https://www.riken.jp/press/2023/20230412_1/index.html

原著論文はこちら:
https://www.nature.com/articles/s43705-023-00233-9

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

研究のアウトリーチ活動について考えてみた

近年、研究機関が自らの研究の価値や成果について、地域住民や一般の方々への情報共有を行う「アウトリーチ活動」が重要視されています。
今回、理研BRCの一般公開で使用した映像の企画・制作を担当したロフトワークの黒沼雄太さんと、プロジェクトの振り返りやアウトリーチのこれからについて議論しました。
今回の意見交換を通して、日々私たちが取り組んでいる「研究」という活動について俯瞰的に考えることにつながり、個人的に非常に有意義な時間を過ごすことができました。改めて、関係者の方に感謝申し上げます。
研究者の方も普段あまり考えていない気づきがあると思いますので、ぜひ今回の議論をご確認ください:
https://loftwork.com/jp/project/rikenbrc_movie

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

稲作の農業生態系のデジタル化プロジェクトが開始します

長岡技術科学大学を中心とした産学官コンソーシアム(研究代表・小笠原渉教授)が、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)の地域共創分野・本格型に採択されました。本プログラムでは、“コメどころ“新潟を次世代に引き継いでいくために、新潟県内の豊富な資源やバイオ技術を活用することで、新潟の地に資源完全循環型バイオコミュニティを実現することを目指し、農家や製造業、自治体、金融機関を含む地域のステークホルダーと対話を重ねながら事業を進めてまいります。
本チームでは、稲作の農業生態系のデジタル化を担当します。地域の農家や研究所の協力を得て、圃場の土壌成分や土壌に含まれる微生物などの水稲栽培ビッグデータを収集・解析し、美味しいコメを作るために必要な水稲‐土壌微生物‐土壌の状態を学術的に明らかにします。学術的エビデンスに基づき、おいしい米・持続的な農業に取り組んでいる水田を可視化することで、生産された米のブランディング・マーケティングにつながればと考えております。

プロジェクトのwebsiteはこちら:
http://coi-next.nagaokaut.ac.jp
websiteのhome一番下にある動画をぜひご覧ください!

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

チームリーダーがプラネタリーヘルスケア・フォーラムで講演します

本フォーラムは、「健康寿命の延伸」を唱える日本ヘルスケア協会が主催です。医学系の団体が主催するフォーラムで農業関連の話をしてくださいと打診を受けたときは正直驚きました。しかしよくよく話を聞いてみると納得でした。
日本ヘルスケア協会では「野菜で健康推進」「お米で健康推進」「土壌で健康推進」の3部会を持っております。また昨今の地球規模での土壌劣化や温暖化により人類の食や健康が脅かされていることから、人々と地球の健康(プラネタリーヘルス)について学び議論する機会を作りたいという想いから本フォーラムが企画されたとのことです。
招待されている方は、森林総研の藤井先生と産総研の菅野先生です。パネルディスカッションにて先生方と土壌とヘルスケアについて議論します。
医療と農学の融合。いつか着手できたらと思っていたトピックスですが、こんなにも早く考える機会をいただけるとは思っておりませんでした。関係者には感謝の気持ちでいっぱいです。この分野融合は必ず次の潮流になると確信しておりますので、本フォーラムでしっかり学んで、意見交換をしていきたいと思います。

参加登録等の詳細はこちら:
https://planetary-healthcareforum.peatix.com

当日の様子:
https://jahi.jp/未分類/3661/

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

チームリーダーが理研イノベーションセミナーで発表します

理化学研究所の研究成果を新たな事業の創出につなげ社会へ還元することを目指した共創活動の一環として、理研イノベーションセミナーが開催されます。
最近の研究動向として、研究成果からの社会還元が強く求められております。また多くの研究者は任期制という社会的な背景もあり、研究者を取り巻く状況は日々速度感が増しております。
一方で、学術研究や基礎研究には多くの時間を要するため、短期的な研究成果に惑わされてしまうことにより、根幹にある研究力の低下が危惧されております。
このような時代の研究者として、どんな行動をすべきか?模索する日々を過ごしておりますが、その解の一つとして、「学術研究段階の研究においても想像力を逞しくて未来ビジョンを描くこと」が大切だという考えに至りました。
本セミナーでの講演では、私が想像する未来について、企業の方と議論してみたいと思います。

理研サイトでの案内
https://www.riken.jp/pr/events/seminars/20220922_1/index.html

理研鼎業サイトでの案内
https://www.innovation-riken.jp/events/seminar14/

アシスタント
南部 真夕
Mayu Nanbu

農業生態系デジタル化研究から事業化に向けた共同研究を開始します

私たちがこれまで進めてきた農業生態系のデジタル化研究を社会に還元するプロジェクトを開始します。NTT西日本、福島大学、北海道大学、東京大学、筑波大学、大阪府立環境農林水産総合研究所、前川総研と事業化に向けた共同研究になります。このような取り組みは私たちにとって新たな挑戦であり、胸が高鳴る思いです。

ニュースリリースはこちらからご覧ください:
https://www.ntt-west.co.jp/news/2202/220221a.html

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

第二回植物微生物シンバイオロジー協議会シンポジウム「植物微生物×オミクス」を開催しました

植物微生物シンバオロジー協議会にて、第二回植物微生物シンバイオロジー協議会シンポジウム「植物微生物×オミクス」をオンライン開催しました。

【プログラム】
13:30-13:35 開会の挨拶(理化学研究所 環境資源科学研究所センター・白須賢 副センター長)
13:35-14:05 【将来ビジョン】(東京大学・岩田洋佳 准教授)
14:05-14:25 【最先端研究】(京都大学・杉山暁史 准教授)
14:25-14:45 【最先端研究】(早稲田大学・細川正人 准教授)
14:45-15:00 休憩
15:00-15:30 【活動紹介】(農水省土づくりコンソーシアム・大倉一樹 課長)
15:30-15:50 【技術紹介】(株式会社生物技研・中野江一郎 代表取締役)
15:50-16:25 総合討論
16:25-16:30 閉会の挨拶(株式会社 前川総合研究所・篠崎聡 代表取締役)

【総合討論】

市橋:東大・岩田先生から、育種分野とマイクロバイオームを含む栽培分野を融合させるビジョンが示された。京大・杉山先生からマイクロバイオーム解析から有用微生物が単離された実学に近いケーススタディが示された。さらに早大・細川先生からシングルゲノミクス、生物技研・中野さんからロングリードについて、現行のマイクロバイオーム技術を凌駕する最先端技術が紹介された。農水省・大倉さんから日本の農業現場の現状と国の取り組み、土壌の生物性評価としてマイクロバイオーム等の解析が注目されていることが示された。以上のように、オミクスの情報から高解像度な情報が得られ、社会実装への期待感はある。しかし実際は課題が多くあるので、まだ実用化に至っていない。一方でアメリカはすでにマイクロバイオームでの土壌診断が行われ、ゲノム情報から新しい有用微生物を単離してシードコーティングして販売するといった種苗会社もある。日本の良さや期待感もあるなか、日本では今後どのような課題があるか?
岩田:データ解析をするためのリテラシーをあげていくことが重要。データ科学の単なるユーザーでなく、積極的にコミットしていくことが有意義である。
市橋:情報リテラシーを高めるために何が足りないか?仕組み上なのか、個人レベルの意識の問題なのか。
岩崎:両方わかる人材が必要だと言われ続けてきて、徐々に変わり始めている。多くの大学で情報系の研究を行うラボが増えてきた。
岩田:ネットで調べればデータ科学の技術が簡単に使えるようになり、浸透してきた。一方で、データ基盤のようなものがすごく強いわけではないので、そのあたりもやっていかなければならない。
市橋:COP15では遺伝資源のデジタル配列情報利用から得られる利益の国際的な配分について議論されているので、今後注目していくべき。
白須:細川先生のbitBiome社のように、ベンチャー企業がリードして、学生が興味を持ち、就職先があるということは大きい。一方で、日本では土壌微生物の確保がまだ弱い。杉山先生のように特定の微生物を取りに行くという方法論は成功しているが、海外のベンチャー企業では、大規模な微生物の確保とスクリーニングにより商品にしている。日本はその部分がまだ弱いし、一大学や研究機関が担当するのも厳しい。そのため、旧来の方法論ではなく、土壌やドロップレットとして微生物を集団で確保するなどの別次元の微生物保存の方向性が出てくると良いと思う。加えて分離した微生物集団から欲しい微生物だけを取り出す技術などをゲノム情報を利用した形で開発していく必要がある。
細川:微生物を単離して保存するという方法では限界があるので、微生物集団として保管するやり方や、管理制御する部分に新しいブレイクスルーが必要。新しいアイデアを出していきたい。
齋藤:農水省では過去にeDNAプロジェクトが実施され、現在はSIPやムーンショットで大規模にデータ取得がされている。そこでは、DNA等のオミクスデータとともに、いかに栽培関連のメタデータをセットで揃えてくるかが重要であり、土壌生物性の評価をどのように栽培の場面につなげていくか課題。新しい発想で切り込んでくれる人が、実際に農業現場で栽培している経験者と一緒に仕事をすることが必要。
南澤:土壌微生物の多様性の高さは常々指摘されてきた。ドロップレットの中で数回細胞分裂させた後に2つに分けて、1つは保存、1つはシーケンス…という技術ができると破壊的。また土壌微生物学の最大の弱点は「モノの流れ」を捉えられていないこと。農業は生産物をつくるプロセスであり、そこでは元素の流れがある。海外では成果が出やすい微生物の単離を大規模に進めているが、急がば回れで「モノの流れ」を捉えていくべきではないか。またオミクス研究をしているつもりが、いつの間にか一つの菌と一つの植物の相互作用になり、従来の研究の延長線をただオミクスを使ってやっているだけになってしまう。そのギャップが解けない理由として「モノの流れ」が分かっていないことがあり、「モノの流れ」を相互作用のサイエンスに結合できれば鬼に金棒。さいごに、社会実装は重要。科学者として世の中の人に役立つものを出していく努力が必要。本気でやって、国民に説明していかなければならない。
野村:微生物は共存する他個体や生育する環境によって個性が変わるため、「並び」が重要。そのため、対象から切り出さずに、なるべく対象のままを見ることが必要で、多様なイメージング技術を利用している。スマホにレーザーを搭載して土壌をリアルタイムにモニタリングすることは絵空事ではない。日本の農業現場の人たちにとって、土壌データが収益に直結しないと興味が示さないだろう。また現在では、短期的な収益だけでなく持続的な収益が着目されているため、気象条件をふまえた土壌分析、その土壌に合った作物のシミュレーション、病害が起きるリスク予測など、サイエンスに基づいた技術開発が大切。若手研究者用のグラント・ACT-X「環境とバイオテクノロジー」を進めており、研究費支援に加えて、アドバイザーと密に意見交換ができるヴァーチャルラボを構築している。
ぜひ多数の募集を:https://www.jst.go.jp/kisoken/act-x/research_area/ongoing/bunya2020-2.html
有江:農水省ではeDNAプロジェクトから続けて、ヘソディム、AIを活用した土壌病害診断技術開発のプロジェクトを実施しており、土壌の性状から病害の発生しやすさを高い確度で予測できる。WAGRIを介してオープンになる予定なので、横のつながりを構築してもらいたい。また従来は有用微生物の選抜が主流であるが、微生物の育種も必要。ここ20年で生物農薬の出荷額は1%ほどで、有機農業や特別栽培の農家に依存した販路のため、より良い処理方法や菌株の発見が必要。
二瓶:窒素の持続可能な利用について栽培法のみでは限界があり、微生物利用に期待。
倉田:16S rRNA遺伝子解析だけで微生物を十分に分類できるか気がかりだったが、最先端技術で解消されて嬉しく思う。一方で、解析した情報が蓄積しても、実際に土壌に適用する方策がまだ見えない。重要な微生物を単離・培養して接種するだけでは問題が解決しない。ましてや土壌微生物の場合は単離・培養できるのは極めて少ないので現実的ではない。微生物を土壌に適用する方法の確立が最も重要。微生物集団として活用する際の方法論も考えると良い。
篠崎:2年前に20名ほどからスタートして今は240名を超える参加者になった。他にはない幅広い分野の方々が集まっていただいたのが本協議会の特徴の一つであり、幅広い分野を横断でできる研究開発につなげたい。農水省みどりの食料システム戦略にはチャレンジできる課題が多数ある。コンソーシアムを組みながら研究開発を続けられる仕組みを作りたい。化学肥料を減らす等の環境問題と収量を確保することのバランスは難しいが不可能ではない。最先端技術で見える化した後にどうソリューションに繋げるかが重要であり、民間企業の仕事でもある。研究開発をしながら産官学連携が必要。

以上、聴講いただいた方からぜひ今回の議論に関係する情報提供をいただけると幸いです。本協議会では定期的にシンポジウムを開催する予定ですが、シンポジウム外でもディスカッションしたいという声があればお問い合わせください。

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi

チームリーダーがシスメックスとの技術交流会に参加しました

理化学研究所は、医療検査機器の国内メーカーであるシスメックスとの共創契約を始めています。
理研との共創契約のプレス発表(2020年1月30日)
https://www.sysmex.co.jp/news/2020/200130.html
この枠組みからシスメックスと理研の技術交流会が11月に開催されました。この技術交流会では、シスメックスの開発者と理研のメディカル系の研究者・技術者が参加し、研究内容などのプレゼン交流、グループ討論を行って、技術マッチングや企業の開発マインドと理研の研究マインドの情報が共有されました。当チームの市橋は農学分野での研究開発を紹介する特別講演のスピーカーとして参加しました。
シスメックス・理研の若手研究者との交流から、医療と農学をつなぐ新たな研究領域を予感でき、有意義な時間を過ごすことができました。

チームリーダー
市橋 泰範
Yasunori Ichihashi